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2015年6月30日

こんにちは。稲葉歯科医院院長、稲葉由里子です。 

6月27.28日『第33回日本顎咬合学会学術大会』が開催されましたので、ご報告させていただきたいと思います。

患者様に読んでいただくには、少し専門的かもしれませんが、稲葉歯科医院の総入れ歯、ドイツで開発されたシュトラックデンチャーがどれだけ精密か、また長い歴史ある総入れ歯であることをご理解いただけると思います(^_^) 

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3名の著名な先生方によるシンポジウム形式で開催されました。

テーマは 『総義歯における下顎位の臨床的決定法』
(総入れ歯の噛み合わせの高さを決めるための決定法について)

会場には沢山の先生方がお集りいただき、立ち見がでるほどの盛況ぶりでした。  

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稲葉繁先生の講演に関して、パワーポイントや資料のお手伝いをしてくださった、IPSG副会長岩田光司先生がいつも側にいてくださったので、安心してこの日を迎えることができました。

岩田先生、いつも本当にありがとうございます。  

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顎間関係を決定する方法として、

咬合高径を決定する方法。

水平的位置を決定する方法。

など、様々な方法がありますが、稲葉先生は計測法を用いています。 

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計測法、ウィリス法の中でも、稲葉先生はレオナルド・ダビンチの比例法を用いています。

ダビンチは、人間が美しく見える基準について法則化し、素晴らしい絵画を描いています。

レオナルド・ダビンチの比例法を応用し、患者様が一番美しく見える総義歯を製作します。

内眼角から口裂の距離は

鼻下点からオトガイ下点

鼻下点から鼻根点

鼻根点から顔面と頭蓋の境

瞳孔間距離

耳介の長さ

眉上隆起の端から耳孔端

までの距離と等しい。 

という法則です。  

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人工歯の排列に先立ち模型分析を行います。

まず模型を上から観察し、正中線を描きます。

前方では切歯乳頭を丸く囲い、その中心を決定します。

そこから矢状正中縫合を通り口蓋小窩の中点を通る線を引きます。

ここが左右の基準線となり排列します。

さらに切歯乳頭を通り矢状正中線に直角に線を引きます。

この線の延長上に犬歯が来ますから、この線をCPCライン、 即ちCanine-Papila-Canineと呼んでいます。

これは後に犬歯を排列するときの指標になります。

前歯の排列は石膏コアーを唇側にあてがい中切歯を排列します。

矢状正中縫合を正中線とし、切端の長さは唇側コアーから2~3mm見えるところに歯槽堤の形態とは関係なく位置付けます。

天然歯の切端の位置は平均して切歯乳頭の中央から7mmの所に中切歯の切端が来ます。

中切歯が決まりましたら、側切歯を排列します。

側切歯の切端は中切歯の切端から約1mm短くします。

さらに唇側はやや内側に入ります。

その後犬歯を排列しますが、これも唇コアを使用し排列します。

犬歯の位置は第一口蓋趨壁の端から2mmの所に犬歯の基底結節が位置し、 そこから7mmの所に来ますがこの時C-C-Pラインの延長上に犬歯の切端が来るように排列します。

このようにすべて計測や法則に基づいています。 

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このように、稲葉先生の総義歯はチュービンゲン大学、シュトラック教授のシュトラックデンチャーを原型としています。 

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稲葉先生が開発した上下同時印象法は、噛めるところ、即ち中心位での印象が採れる唯一の方法です。

咬合採得、中心位記録、フェイスボートランスファー、ゴシックアーチを1度で行う事により、 一連の作業を簡易化することができると同時に、患者様の情報を、 咬合器に確実にトランスファーすることが可能になります。

フェイスボートランスファーを使用することで、矢状正中とカンペル平面を読み取ることができます。

そして、シュトラックデンチャーの歯肉形成、よくご覧頂きたいと思います。

バッカルシェルフの厚み、そしてサブリンガルルームの大きさが特徴です。 

上下顎同時印象法の様子もすべて動画でご覧頂きました。 

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こちらが、ガンタイプのシリコン印象材で上下顎同時印象した印象です。

患者様の口腔内をすべてまるごとコピーできる画期的な手法です。

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日本の多くの大学で行われている総義歯はヨーロッパのギージーの流れを汲むものです。

ギージーによるシンプレックス咬合器に与える顆路傾斜は30度に設定し、 切歯路角は顆路も同様に30度に設定します。

したがって咬頭傾斜角も30度となり、フルバランスドオクルージョンが生まれます。

この時臼歯の排列はスピーの湾曲を作るように咬合平面を基準に排列します。

上下の歯槽堤の最も高いところを結んだ角度、いわゆる歯槽頂間線を基準に排列しますが、しばしば上顎の歯列が小さいときは歯槽頂を基準に排列する関係から正常に排列できない場合があります。

その角度は80度が基準で80度を超えると交叉咬合排列を行う必要があります。

いずれにしても歯槽頂を基準にした排列をするように指示されています。

その結果上顎の排列は歯列弓が舌側になり、頬の粘膜との間が空く結果となります。

そのため食物の停滞を招いてしまいます。

シュトラックデンチャーでは元歯が有った所に排列するのが原則であるため、 歯槽頂とは関係なく口腔周囲筋のバランスの良いところに排列するため、 頬側に食物の停滞を招くことを防ぐことが出来ます。

シュトラックデンチャーに使用する人工歯は咬頭傾斜25度のオルソシットを使用しますが、 咬合平面の傾斜などを考慮すると最終的な矢状顆路角は30度程度になります。

老人の下顎頭は平たんになっていることがほとんどであるため、 顆路を計測しそれを咬合器に与えても顆路が修復されることは望めないため、 平均的な顆路を与えて下顎頭のリモデリングを期待するのが良いと思います。

シュトラックデンチャーは義歯が下顎頭を誘導するというコンセプトですから、 しっかり上下顎ともに吸着する義歯を作ることが必要です。

これらの条件を満たす方法は上下顎同時印象によるデンチャースペースが再現できる私の方法が一番優れていると思います。 

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昨年の『総義歯ライブ実習コース』の模様を今回の学会で講演させていただきました。

(※患者様からセミナーや学会での発表の承諾をいただいております。)

患者様は、美しい口元と取り戻されました。

年齢も38歳と若く、今まで口元のコンプレックスで辛い思いを沢山されてきたと思います。

これからは、自信を取り戻し、第二の人生を歩まれるでしょう。

会場へ足を運んでくださった先生方、本当にありがとうございました。 

 

2015年5月11日

『顎関節症ライブ実習コース』〜その3〜

に引き続き、一連の実習コースのまとめとして、IPSG副会長岩田光司先生が講義をしてくださいました♪ 

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まず、患者様の姿勢について、どのようなポイントに気をつけて考察したらよいかをお話いただきました。

顎関節症の患者様は前傾姿勢の方が多いのですが、今回はそんなに前傾にはなっていませんでした。 

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治療前の開口量は2.3センチ。

クローズドロックの状態です。 

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ドップラー聴診器による関節音の記録について、動画でご覧頂きました。 

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そして、クローズドロックを解除、

マニュピレーションの様子を動画でわかりやすく解説。 

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そして、患者様の口腔内の様子です。

私が最初にこのオルソパントモグラフィーを見た時、あきらかな原因が見られないと思いました。

例えば臼歯の挺出、8番の干渉などです。

しかも、15年も開いていない・・・

となると、本当に治るのか少し不安が過りました。

患者様は矯正治療をされていて、矯正が修了したあたりから、徐々に口が開かなくなったとおっしゃっていました。 

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咬合診断の手法について、気をつける点、チェックポイントなど岩田先生がわかりやすく解説♪ 

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術前のKaVoアルクスディグマでは、関節が結節を乗り越えていません。

関節顆の中だけで回転運動をしているのがわかります。 

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KaVoプロター咬合器に模型を付着。 

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顆路傾斜各は

右側 矢状顆路角 45度 側方顆路角 8度

左側 矢状顆路角 50度 側方顆路角 8度

矢状顆路角の傾斜がやや強いけれど、イミディエートサイドシフトはありません。 

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顎関節症の分類もしっかりと頭の中に入れておきたいものです。

動画を用いて説明された、ステージ分類は非常にわかりやすかったです。  

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そして、こちらが治療前、治療後の開閉口の結果です!!!

左が治療前、右が治療後。

あきらかに動きが違うのをご覧頂けますでしょうか?

開口量は倍。

関節も回転だけではなく、滑走している様子がご覧頂けるかと思います。

素晴らしい〜!!  

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EPAテストもど真ん中。

稲葉先生の中心位の記録の正確さには、先生方もびっくりされていました。 

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治療後のディグマ、滑走しているのを確認しました。

一日で、この変化は凄いことだと思います。 

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岩田先生が最後にわかりやすくまとめてくださったため、先生方も頭の整理ができました。

最後の質問も、終わりがないほど続きました。

その中で、私も質問したかったこと。

「15年間もクローズドロックの状態だったので、骨癒着、アンキローシスをおこしていたら口が開かなかったと思うのですが、その点どのように判断されたのでしょうか?」

との質問に。

「口を開ける前に中心咬合位で側方運動を確認しました。そこでわずかに関節が動いているのを確認し、アンキローシスを起こしていないことを確信しました。」

と稲葉先生。

奥が深いです〜!

実際、アンキローシスを起こして開かない患者様を何人かみているので、その判断方法はどのようにするのか、私も悩んでいました。

あの時、そんな、細かいところをチェックしていたなんて・・・

稲葉先生の凄いところは、口で言うことをすべてやってみせ、結果を出すところだと思います。

臨床をやらないで、講義だけする先生との説得力とはまるで違います。  

今回の実習は本当に素晴らしく、受講してくださった先生方は歯科の仕事のやりがい、喜びを感じてくださったと思います。

私自身、患者様が娘の保育園小学校のパパ友ということもありレポートさせていただけた事で、大変勉強になりました。

患者様の笑顔を思い出し、これからも頑張っていきたいと思います(^_<)-☆

2日間ご参加いただいた先生方本当にありがとうございました。 


『顎関節症ライブ実習コース』〜その2〜に引き続き、いよいよ治療です。

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前日にマニュピレーションを行い、開口量2.3センチだった関節が、4.5センチまで開くことができるようになりました。

変化として、顎のクリック音が出始めたということ。

ドップラー聴診器で音を確かめます。

「顎が鳴るっていうのは、良い傾向ですよ!関節円板に乗って口が開いている事ですから(^_^)」

と稲葉先生。

関節の音がしない。

という事は、正常で音がしないという事と、関節円板が落ちて滑走できないために、音がしない事と2つの理由があります。

昔、クリック音があったけれど、最近なくなった。

というのが一番危ないと話がありました。 

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 当日の朝ごはんは♪

「今迄食べる事ができなかった大きなおにぎりを食べる事ができました!」

と早速Facebookから写真付きのメッセージが・・・ 良かったですね!!

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咬合紙で中心位の接触から調べて行きます。

咬合器とほとんど同じ接触です。

今回の咬合調整法はギシェー法です。

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素晴らしい!

こんな大画面で稲葉先生の咬合調整を見る事ができます。

非常にわかりやすかったと思います。

【ギシェー法・咬合調整順序】

1.中心位の早期接触を除去します。

接触している部位を上下とも削除します。

ただし、この時セントリックストップを失わないように、また、セントリックストップの位置が咬頭頂と窩底となるように、咬頭をシャープに窩底を広げるように削ります。

2.前方運動時の干渉、接触の除去

●平衡側

支持咬頭の内斜面を咬頭頂(セントリックストップ)を残して削除し、この咬頭の通り路を対向する支持咬頭内斜面に形成します。

この時、窩底につくったセントリックストップを削除しないように気をつけてください。

●作業側

上顎舌側咬頭の外斜面を咬頭頂を残し削除します。

下顎の舌側咬頭内斜面については求める咬合形式が犬歯誘導かグループファンクションかによって、 またグループファンクションにしてもどの歯まで接触させるかで接触させる歯させない歯が出てきます。

接触させない場合は下顎咬頭外斜面を削除し、この咬頭い通り路を上顎咬頭内斜面に形成します。

接触させる場合でも広報の歯が強くあたるのは干渉であるので、同時に接触するように調整します。

犬歯誘導の場合はこのような臼歯部接触はすべて除去します。

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スチュアートの咬合調整法との違いは、中心位の調整を最初にやるか最後にやるかということですね。

どちらにも共通する原則は、不正なテコ現象の視点となるような咬合接触を取り除く事、そして咬頭嵌合時に臼歯には歯軸方向に力、荷重が加わるようにすることです!  

と説明がありました。

咬合調整と言ってもごくわずかです。

調整後、咬合した時の音が高く澄んだ音に変わりました。

原因を取り除きました。

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そして、ディグマで治療後の様子を確認します。

ディグマの治療前、治療後のデータについては、

『顎関節症ライブ実習コース』〜その4〜でお伝えいたします♪ 

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私たちが何より嬉しいのは、患者様の喜びです。

何度も何度も口を開いて、口が開く喜びを噛みしめてくださいました。

お子様からも、

「こんなに口を大きく開くパパ、初めて見た!」

とびっくりしながら言われたそうです(^_<)-☆

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患者様と稲葉先生も和やかでしたし、実習の雰囲気も熱気が伝わってきました。

ご協力いただいた患者様の坪坂さん、本当に感謝です。

坪坂さんのおかげで、歯科医療の深み、喜びを改めて実感された先生も沢山いらっしゃったのではと思います。

『顎関節症ライブ実習コース』〜その4〜では、治療前、治療後を考察したいと思います!!

 


『顎関節症ライブ実習コース』〜その1〜に引き続き、

朝はやくからお集りいただき、先生方の熱心な様子が伝わってきました。 

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9時から10時まで、大画面モニターを用いて、実習形式で講義がありました。

大変重要な内容だったので お伝えしたいと思います。  

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前日にマニュピレーションをし、患者様の口を開けましたが、そうなった原因は取り除いていないので、また再発する可能性が高いです。

私たちは咬合診断により原因を突き止め、原因を治療することにより、再びロックしないように、口が開く状態を永続性があるようにしなければなりません。

咬合調整の目的は・・・

顎関節を考えた咬合調整をすること。

顎関節と円板をタイトにすることです。

ギシェーは顎関節を第4大臼歯と呼んでいるほど、咬合と密接に関わっています。 

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顆路とは側頭骨の関節窩に対して、下顎頭(顆頭)が関節円板を介して、顎が動いていく状態のことを言います。

その中で、下顎が前方に動いていく道を『矢状顆路角』といいます。

側方運動では、平衡側で矢状顆路角の前内下方を通ります。

これを『側方顆路角』といいます。

通常、この矢状顆路角、側方顆路角は咬合平面に対する角度で表し、咬合平面は、カンペル平面(補綴平面)とほぼパラレルであるため、カンペル平面となす角度としてとらえることができます。 

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 ギージーは矢状顆路角は平均33度としています。

側方顆路角は矢状顆路角より、さらに内方を通るため、角度は5度程度急になります。

矢状顆路角と側方顆路角のなす角度を『フィッシャーアングル』と呼んでいます。

フィッシャーアングルは5度です。 

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さらに、これを水平面に投影した角度を『ベネット角』といいます。

その角度はギージーによれば、13.9度でありますが、ランディーンによれば、下顎の側方運動開始から4ミリのところで、サイドシフトとよばれる動きが現れます。

(これをイミディエートサイドシフトと呼んでいます)

最初の4ミリを超えると、差がなくなり、その平均値は7度で個人差はみられません。

側方顆路角の平均値は7度と覚えておくだけでも、大きな助けとなります。 

●イミディエートサイドシフトとは。

下顎側方運動の際、作業側で下顎頭は回転し、平衡側では前内下方に動きますが、作業側の下顎頭は純粋な回転ではなく、わずかに側方に移動しながら平衡側は動きます。

したがって平衡側では動き初めに即座に作業側の方向に動きます。

これを『イミディエートサイドシフト』といいます。

この運動は、咬合面に描かれるゴシックアーチの形態に影響してきます。

中心支持咬頭(セントリックカスプ)の動き初めにその軌跡が変化しますので、中心位からの作業側、平衡側ともに干渉をおこしやすくなります。

そのため、中心位における運動の出だしを調整する必要がでてきます。

これを再現するためには、作業側顆頭の性質を再現できるような咬合器を使用することが必要です(^_<)-☆ 

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咬合調整 

◆BULLの法則

咬合調整の時に咬合紙の色が印記された歯が上顎と下顎どちらを削ったらいいのか悩むことがあります。 その時、どちらを削るのかという法則です。

ぜひ、模型をみていただいて、確かめていただきたいと思います。

● 非作業側→上顎では下顎歯の咬頭が通過できるよう。また下顎には上顎歯の咬頭が通過できるように、溝を形成します。

● 作業側→BULLの法則を適用します。

BULLの法則といいうことは、上顎(U)の頬側咬頭(B)、下顎(L)では舌側咬頭(L)を削るというルールです。

下顎の前歯の切歯点を結んだ三角をボンウィルの三角(10センチ)といいますが、最低でもこの大きさの咬合器でないといけません。 

 ボンウィルの三角と咬合平面(曲面)とのなす角はバルクウィル角(平均26度)ですね☆

「咬合診断を行うためには、このような基本をきちんと抑えておく必要があります。」

と稲葉先生。

基本をしっかりと抑える。

大切なことですね!!! 

 

稲葉歯科医院院長、稲葉由里子です。

先日、顧問である稲葉繁先生が代表を務める、IPSG包括歯科医療研究会、

『顎関節症ライブ実習コース』が開催されました。

全国の歯科医師の先生方を対象に開催される勉強会です。

先生方への報告なので、少し専門的だと思いますが、

ぜひ、読んでみてくださいね♪

全国から沢山の先生方にお集りいただきました。

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『顎関節症ライブ実習コース』は実際に顎関節症の患者様をお呼びし、 問診から、治療まですべて先生方の目の前で、デモンストレーションさせていただきます。

咬合からのアプローチで顎関節症を治療する実習はIPSGでしか行っていない、非常に貴重なセミナーです。

最近は、顎関節症と咬合は関係がないという風潮がありますが、本当にそうでしょうか?

咬合器を使い、咬合診断ができる方であれば、関係がないとは言えないはずです。

「顎関節症をどうやって治したらいいのかわからない。」

「マウスピースを入れるぐらいしか、治療方法が思い浮かばない。」

という声を聞きます。

IPSGでは、20年間の間、咬合からのアプローチで顎関節症の患者様を治してきました。

ぜひ、2日間じっくり勉強していただきたいと思います。 

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稲葉先生がドイツに留学したきっかけとなったのは、当時チュービンゲン大学口腔外科のシュルテ教授の論文に非常に感銘を受けたからです。

442名の患者様の治療内容を丁寧に整理し、順序立てて解説されている論文でした。

稲葉先生はすぐにシュルテ教授に手紙を送り、ドイツへ客員教授としてチュービンゲン大学に在籍することになりました。

1年に1度開催される特別講義は、4週間の間、朝から晩まで徹底的に顎関節症を学びました。

テレスコープシステムの権威、ケルバー教授のもとに在籍していたということもあり、テレスコープについてもドイツテレスコープの全盛期に学ぶ事ができました。 

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1980年に帰国し、シュルテ教授から学んだ内容などをまとめて文献や学会で発表しました。

『顎口腔系機能障害患者の家庭療法』

家庭療法に関しては、今でこそ日本でも取り上げられていますが、当時は全く興味を持ってもらえなかったそうです。

早すぎたのでしょうね。

舌癖に関しても、シュルテ教授から沢山学んだそうです。

顎関節症に関して、手術をしなければいけない症例は442名の中、たったの16名だったと言いますが、稲葉先生の経験ではほとんど咬合からのアプローチでほとんど解決できるとのことです。

顎関節症は、肉体的なものと、精神的なものは分けた方がいい。

精神的な状態に追い込む前に我々が治す必要がある。

と言っていました。

最近では、顎関節症と咬合は関係がないから、噛まさないようにしなさい。

と指導している先生もいらっしゃるようですが、現実無理です。

咬合と関係がないと言いながら噛み合わせてはいけないというのは矛盾があります。

患者様を不幸にしないためにも、しっかりと咬合を学び、咬合診断をして原因を見つけられなくてはいけません。

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顎関節症の基礎知識について、詳しく話しをしました。

咬合調整の目的は・・・ 顎関節を考えた咬合調整をすること。

顎関節と円板をタイトにすることです。 ギシェーは顎関節を第4大臼歯と呼んでいるほど、咬合と密接に関わっています。

いつもお伝えしますが、顎の形は五角形です。

わかりやすいのは、椅子は五角形が一番安定することを思い浮かべて頂ければと思います。

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いよいよ、患者様がいらっしゃいました。

今回ご協力いただいた患者様は、私の娘の保育園、小学校のパパ友の坪坂さん。

家族ぐるみで仲良くさせていただいています(^_^) 

実習当日に初めて来院してくださいました。

事前にメールをいただいていた内容は。

・・・・・・・・ 

・上下の歯の間に指2本入るか入らないくらいのところで口がそれ以上開かなくなる(ロックするような感じ)

・顎を左右にずらすようにするとゴキッという音がしてそれ以上開くようになる。 (左右で若干違っていて、右は最初にロックした位置で止まっていて、左をずらす感じです)

・普段は痛みなどはないが、冬の寒い日などにやや痛みを感じることがある

・普段の食事はよいのですが、おにぎりやサンドイッチのように切り分けて食べられないものは結構大変です。 肩こり、腰痛はあります。 腰痛は特にひどいです。 あと関係あるかわかりませんが、年中鼻が詰まっている感じです

・・・・・・・・・

このメールを読んだ時は、口を開く事ができるのかな。

と思っていましたが実際は。

なんと。

15年も口が開かない、クローズドロックの状態でした(>_<)

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筋触診から始めます。

筋肉は割とリラックスしていて、異常な緊張などはみられませんでした。 

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IPSGセミナールームではご覧のように、患者様の口の中の様子がリアルタイムで、先生方にご覧頂けるため、実際に口の中を覗くよりもわかりやすく大画面で勉強していただくことができます。

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開口量は、2.3センチ。

ということは、指2本分です。 

円板に乗って滑走していない、クローズドロックの状態ですね。 

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ドップラー聴診器による、クリック音の検査。

浅側頭動脈の音を確認し、そこから5ミリ前方が顎関節の位置です。

左側に雑音が少しありました。 

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佐藤先生によるKaVoアルクスディグマによる顎機能検査で治療前の状態を記録します。  

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そして、マニュピレーションです。

口が開かなければ、咬合診断をするための印象を採ることができません。

この時、稲葉先生は何かを調べていました。 

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「よし、乗った!」

ということで、鮮やかです!!

実は口が開くかどうかとても心配でした。

なぜなら、15年間も口が開いていなかったので骨性癒着、アンキローシスを起こしている可能性があったからです。 

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患者様もビックリ。

まさか、自分がこんなに口が開くとは思わなかった。

とおっしゃっていました。 

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開口量、4.5センチ。

患者様は痛みなく、スムーズに開ける事ができました。

もし。

開かなかったらどうしよう・・・

という私の不安は払拭。

本当によかった。

素晴らしいです! 

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さて、ここからは咬合診断です。

患者様は意識されていませんが、ずっと足を組んでいらっしゃいます。

フェイスボウトランスファーで、上顎の位置を咬合器にトランスファーします。 

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中心位、チェックバイトを記録します。

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患者様の坪坂さん、一番前の席で興味深く見ています。 

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中心位、中心咬合位のズレを確認。

カタカタとやはり落ち着いてないようです。 

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やはりマニュピレーションを間近でご覧頂いたので、先生方も興奮しています。 

稲葉先生のダジャレに、先生方も和やか(^_^) 

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坪坂さん、口が開くようになった事が新鮮だったようで・・・

常に口を開いて確認していらっしゃいますね(^_<)-☆ 

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先生方からの積極的などんな質問にも答えている稲葉先生。

さすがだなぁ・・・

と感心しました!

明日は9時から咬合器の調整、そしていよいよ患者様の咬合調整です♪ 

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ということで。

懇親会です!

稲葉歯科医院近く、末広町にあるLallenza.

素敵なイタリアンです。 

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20年間ライブ実習を行って来て初だと思うのですが。

患者様も懇親会に参加いただきました!! 

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「乾杯♪」

沢山勉強した後のお食事、ワインは格別に美味しいですね! 

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お料理もとっても美味しい♪ 

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ワインと一緒に、会話に華が咲きました♪ 

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坪坂さん、

「食事とワインがこんなに美味しいと思ったのは久しぶり」

以前は、口が開かなかったために、常に口が汚れやすかったので食事をして、一度口を拭いてからワインを頂いていたとのこと。

「口が開くようになったら、一度拭かなくてもそのままワインが飲めます!」 

最後にはグラッパも一緒にいただきました。

明日は、またロックしないために、咬合調整により原因をとります。

楽しみです!!! 

 

2015年2月 2日

『稲葉式コーヌスクローネ』とは


最近、歯科の雑誌で、頻繁にドイツで開発された入れ歯、テレスコープシステムが取り上げられています。

確実に、稲葉繁先生が代表を務める、IPSG20周年記念特別講演会の効果だと感じます。

コーヌスクローネは、1980年代当時、爆発的に流行りました。
しかし10年間位で下火になってしまいました。
色々なトラブルが生じてしまい、その評価を落としてしまったからです。

トラブルの原因は、入れ歯の設計、製作方法、使用金属、
適応症等が統一されていなかったためだと思われます。

結果、コーヌスクローネは、次第に使われなくなってしまいました。

その、コーヌスクローネが最近見直されているようです。

ですが、よく読んでいると、相変わらず間違った情報が多いように感じます。

稲葉先生は、本場ドイツで直接コーヌスクローネを学びました。

Karlheinz Koerber教授のKonuskronen,コーヌスクローネの原書。
もちろんドイツ語で書かれているのですが、稲葉先生がボロボロになるまで読んだコーヌスクローネの教科書です。

コーヌスクローネの設計、製作法、適応症、禁忌症、解決法などが、
沢山の事がこの一冊に書かれています。

原書の内容と、日本で広まりつつある内容に食い違いがあるのです。

コーヌスクローネは、沢山のルール、製作法があってはじめて成功するものであって、
自己流で製作するものではありません。

とはいえども・・・

なかなか食止める事ができません。

稲葉先生はコーヌスクローネの本場ドイツで一次情報を得て、原書通りの治療方法でこれまで、素晴らしい結果を得ています。

『稲葉式コーヌスクローネ』

として、日本で広まっている他のコーヌスクローネと分けて、原書通り、正当派コーヌスクローネを守っていきたいと思っています。

まず、1980年代臨床家の間に広まったコーヌスクローネが評判を落としてしまったのか。

また、正しいコーヌスクローネとはどのようなものかを稲葉繁が詳しくお伝えさせていただきたいと思います。

▼目次
1.テレスコープシステムの歴史とコーヌスクローネへの誤解

2.ドイツでのコーヌスクローネの扱われ方

3.日本でのコーヌスクローネの扱われ方

4.今後のコーヌスクローネの活用方法

1.テレスコープシステムの歴史とコーヌスクローネへの誤解
  
日本ではコーヌスクローネしか知られていませんが、ドイツには様々なテレスコープシステムがあります。コーヌスクローネの間違った方法が広まってしまったためにテレスコープ全体の評判を落としてしまうことは大変残念な事です。

1980年代、コーヌスクローネの本が翻訳され、一部の先生方により爆発的に流行りました。

しかし10年間位で下火になってしまいました。色々なトラブルが生じてしまい、その評価を落としてしまったからです。トラブルの原因は入れ歯の設計、製作方法、使用金属、適応症等が統一されていなかったためだと思われます。

結果、コーヌスクローネは、次第に使われなくなってしまいました。
2.ドイツでのコーヌスクローネの扱われ方
 
ドイツでは、コーヌスクローネはテレスコープシステムの中の一つで、特別な方法ではありませんでした。
私は、コーヌスクローネは勿論の事、リーゲルテレスコープ、レジリエンツテレスコープ、アンカーバンドテレスコープ等様々なテレスコープシステムを使い、ほとんどすべて、様々なケースの症例をカバーすることができることを知りました。

特にリーゲルテレスコープは応用範囲が広く、回転リーゲル、旋回リーゲルを使っていました。これらのテレスコープシステムによる臨床を実際にドイツで経験する事が出来ました。
その事が現在までの私の臨床の基本になっています。
3.日本でのコーヌスクローネの扱われ方
 
1980年に帰国をしてみるとコーヌスクラウンという名前で一般の臨床家の間で広まりつつありましたが、実際にドイツで行っている臨床と製作システムが大きく異なっていました。
使用金属は金銀パラジウム合金が使用されていて、ドイツで使用していた、ゴールドとは似ても似つかないものでした。私がドイツで、学んだ方法とは全く違っていたのです。

金銀パラジウム合金は長期使用で、精度が狂います。そこで正しい「コーヌスクローネ」を広めなければならないと考え、松風カラーアトラスに「コーヌスクローネ」と「リーゲルテレスコープ」を出版しました。

特に大きな違いは、日本の指導者は削る量が多いので歯の神経を抜くように指導していたことです。歯の神経を抜く事がトラブルの原因となり、歯が割れ、コーヌスクローネの評判を大きく落としてしまいました。ドイツでは、コーヌスの支台歯には原則として神経のある歯を使わなければならないということでしたが、日本では全く逆でした。

さらに、歯を守るためには入れ歯の設計の基本を知らなければなりませんが、殆ど知られていませんでした。
特にコンビネーションのケースに使われる「トーションバー」や「シュパルテ」という歯の破折を防止する床の設計は知られておらず、歯の破折を防止する対策が全くなされていませんでした。

その様なことが重なり、コーヌスクローネで治療する先生が少なくなってしまいました。
4.今後のコーヌスクローネの活用方法
一方で、正しい方法で行われたコーヌスクローネは、多くの症例で30年以上の経過を保っており、患者様に大変喜ばれております。
私は、ドイツのチュービンゲン大学に客員教授としてE.ケルバー教授のもとに滞在している時に、幸いな事に多くのテレスコープを経験し、一次情報を得てきました。

臨床で使われるテレスコープシステムはコーヌスクローネだけではありませんので、リーゲルテレスコープ、レジリエンツテレスコープ等を適材適所に使い、臨床の幅を広げていただきたいと思っています。さらに最近ではインプラントとの併用によりさらに良い結果が得られていますので将来に期待したいと思っています。

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当時稲葉先生が出版した
『正統派コーヌスクローネ』が冊子になりました!
オクルーザルコアの使用、コーヌスのミリングマシーン、正しい印象法、セット方法など、詳しく正しい方法で書かれています。
コーヌスクローネの基本的な設計は、すべてのパーシャルデンチャーに応用することができます。

他では入手することができない一冊、ぜひお手に取って頂けたら幸いです。
(歯科医師対象)



⇒書籍の詳細はこちらから

2015年1月28日

こんにちは。
稲葉歯科医院院長、稲葉由里子です。

入れ歯に関する問い合わせそして相談が以前に増して増えています。

当院の患者様は全国からいらっしゃいますが、最近は海外に住んでいらっしゃる日本人の患者様からご相談をいただくようになりました。

やはり、入れ歯に関する情報は日本語で読み、日本人の先生に相談をされたいと思われているようです。

テレスコープシステムは、大変精密で技工作業にどうしても時間がかかります。
高度な技術も必要ですし、簡単には製作できません。

型とりをしてから最低でも4回は通っていただく必要があります。
患者様は一ヶ月に一度、日本に治療にいらしていただいておりますが、完成に期待を寄せ、楽しみにしてくださっています。

世界的にもインプラント治療に偏っている傾向にあるので、インプラントが出来ない方、またやりたくない方は、テレスコープシステムの技術を求めて帰国されるようです。

ドイツでは120年以上の歴史あるテレスコープシステム、入れ歯の技術が今、日本で求められていると実感しています。

そして、全体的に、最近のご相談内容で多い事。

以前は、入れ歯になるのが嫌だから、インプラントをされる方が多くいらっしゃいました。
最近の傾向としては、インプラントをするのが嫌だから、入れ歯をしたいとおっしゃる方が増えているように感じます。

先日、どうしてもインプラントをしたくないとおっしゃる患者様がいらっしゃいました。
沢山の歯科医院に相談したけれども、120%すべての先生がインプラントを薦められるので、治療が先に進まないということでした。

患者様は、説得される度に疲れてしまったといいます。

また、別の例では、70代の女性の患者様のお口の中に歯8本のインプラントが入っていました。
最初は3本のインプラントだけでしたが、継ぎ足し継ぎ足しで8本になったとおっしゃいました。

大変な思いをされて治療されたインプラントは腫れていました。
痛くて噛めないとおっしゃいます。
今回、もう1本化膿した歯があるので、そこもインプラントと言われ、もう嫌になってしまったそうです。

私は思いました。

もっと、全体的に治療計画を立てないといけなかったのでは・・・
ということです。

歯がないところにインプラントを入れる。

という治療計画はあまりに安易だと感じます。
患者様の年齢も考え、将来他の残っている歯がどうなるかも予想し、患者様にもリスクをお伝えしないと、結果患者様から信頼を失ってしまう事にもなりかねません。

また、せっかく入れたインプラントですが、噛み合わせがあっていない、噛んでいないケースも多く見受けられます。

昨年、ドイツチュービンゲン大学、Weber教授をお招きし、ドイツでの最新治療についてお話をいただきました。

多数歯欠損(沢山の歯を失っている場合)インプラント治療の上部構造にテレスコープシステムを併用することが増えていて、万が一インプラントを失ってしまっても対応できるようにされていました。

入れ歯をするにも、インプラントをするにも、診査診断はとても重要だと思います。

失った歯だけを補えば良いわけではなく、全体を予測することが大切です。

ドイツの歯科大学では、失った歯に対して、入れ歯やインプラントの治療計画、設計の授業があります。

教授を交えて議論します。

日本でも大学から、診査診断治療計画、全体を予測する教育がとても大切だと感じました。


2015年1月 9日

稲葉歯科医院顧問、稲葉繁先生が代表を務めるIPSG包括歯科医療研究会の学術大会に登山家でありプロスキーヤーの三浦雄一郎さんをお招きしました♪

以前、スイスの銀行UBSからのご招待で三浦雄一郎さんのお話を伺う機会がありました。

お話の中で『嚥下』の話題がでてきたのですが、大変興味深く、是非皆様にも聞いて頂きたいと思い、今回の企画に至りました。 

『超高齢社会におけるチャレンジと夢』

〜三浦氏が語る嚥下の重要性〜

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▼三浦雄一郎さん略歴 

・1932年青森市に生まれる。

・1964年イタリア・キロメーターランセに日本人として初めて参加、 時速172.084キロの当時の世界新記録樹立。

・1966年富士山直滑降。

・1970年エベレスト・サウスコル8,000m 世界最高地点スキー滑降(ギネス認定)を成し遂げ、 その記録映画 [THE MAN WHO SKIED DOWN EVEREST] はアカデミー賞を受賞。

・1985年世界七大陸最高峰のスキー滑降を完全達成。

・2003年次男(豪太)とともにエベレスト登頂、 当時の世界最高年齢登頂記録(70歳7ヶ月)樹立。

・2008年、75歳2度目、2013年80歳にて3度目のエベレスト登頂 世界最高年齢登頂記録更新を果たす。 アドベンチャー・スキーヤーとしてだけでなく、行動する知性派また教育者として 国際的に活躍中。 記録映画、写真集、著書多数。 

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三浦雄一郎さんは、世界七大陸最高峰全峰から滑降を成功させたアドベンチャー・スキーヤーや登山家としてだけでなく、写真集や著書なども多数出版され、行動する知性派また教育者として国際的に活躍されている方です。

昨年5月に80才で3度目のエベレスト登頂に成功しました。

片足に5キロ、背中に25キロの重りをつけてとにかく歩いてトレーニングをされたそうです。

76才の時には大腿骨骨折、普通は寝たきりになってしまうこともあるかと思いますが、登頂への強い意志で乗り切り、80才登頂に成功したそうです。

8000メートルはデスゾーンと呼ばれるそうですが、ここは寝ていても軽くジョギングしているような心拍数、常に心臓にも負担がかかっている状態です。 

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80才とは思えない程強い声、そして冗談を交えて聞く人たちを惹き付けていて素晴らしい講演でした。

普通では考えられない様な運動量。

三浦さんはよく若い人たちと飲んだり食べたりされるそうですが、ステーキは今でも1キロ召し上がるそうで、次の日はお腹が空いているとおっしゃっていました。

「草食系男子とか、肉食系女子という言葉があるけれど、僕は肉食系老人というところでしょうか。」

会場は大爆笑。

歯に関しても、興味深いお話がありました。 

海外遠征をする際、気をつけることの中に虫歯治療があるそうです。

以前、ヒマラヤに行って、3500メートル、3800メートルと登るに連れて高山病とともに奥歯が腫れてしまったそうです。

とても山を登れる状態ではなくなり・・・・

歯医者の心得のあるおばあちゃんがでてきて。笑

シェルパならば麻酔なしで抜いてしまうそうですが、日本人や欧米人は怖がりだからということで、麻酔をして抜いてくれたそうです。

歯医者の心得・・・

こっ怖いです〜!! 

結局その時は、ドクターストップで下山されたそうです。 

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いよいよ『嚥下』の重要性についてお話がありました。 

三浦雄一郎さんのお父様、三浦敬三さんは101才で現役のプロスキーヤーだったそうで、99才でモンブランを滑走されたということです。

その秘訣は・・・ なんと、『嚥下』だそうです♪

毎朝、嚥下体操(舌だし体操)を100回なさっているそうです。

顔の皺がよらないためにはどういう方法がいいか、顔面の筋肉を強化したほうがいいのではとお考えになったそうです。

舌だし体操により、胸の筋肉や首の筋肉の他、顔面全体の筋肉を使う事を実感されたそうです。 

そして90歳を越えると食が細くなりますが、玄米を最低50回から100回噛んでいた。

とおっしゃっていました。

呼吸法に関しても大変興味深いお話がありました。

口をふさぎ、片側の鼻を抑えてゆっくり呼吸をする運動をされていたそうです。

IPSG会長の飯塚能成先生の講演の中で、このような事を先生方にお伝えしていました。 

『呼吸は普段は無意識に行っている付随運動ですが、意識的にも呼吸ができます。

意識的な鼻呼吸は自立神経に働きかける事ができます。

鼻呼吸と嚥下は唯一意識的に自立神経に働きかける事ができます。

そして、鼻腔は気道の最初の入り口であり空気中の異物を除去したり、加湿、加温などにより肺を保護しています。』

三浦さんのお父様が感覚的にやってきたことが、実は凄い健康法だったということです。

脳の血流は97歳で40代の血流。

102歳でボケる事なく亡くなったということです。

もうひとつ、わたしが感銘したのは、三浦雄一郎さんはいつもバリアだらけで生活をされているということです。 

今、日本ではバリアフリーの施設が増えています。

介護施設でもほとんどがバリアフリー。

ですが、ドイツの要介護老人施設では、エレベーターを使わずに頑張って歩いたり、階段や段差も乗り越えることを推奨しています。

それこそが、リハビリなのではないでしょうか。

バリアフリーにしすぎてしまった結果、日本では寝たきり老人が急増しています。

三浦さんは片足に5キロずつ、そして背中に25キロの重りを背負っています。

そして家の中はバリアだらけ。 

最後に・・・

稲葉先生が質問。

「85歳でエベレスト登頂を目指しているのでしょうか?」

三浦さんからはビックリするような答えが帰ってきました。

「実は85歳でエベレストではないけれど、他の8000メートル級の山を登り、帰りはスキーで下山しようと思っています。そして、90歳でエベレストを目指したい。IPS細胞に大きな期待を寄せています。」

ということでした。

会場の先生方は空いた口が塞がらないほど驚きと響めきがありました。  

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三浦さんのエベレスト登頂に向けた攻めの気持ちをお聞きして、ご参加いただいた先生方も大きな刺激を受けていただいたと思います。

歯科の分野で重要な事は『歯』に関する知識だけではありません。

目標を持って、技術を向上するために、三浦さんのお話に刺激を受ける事は非常に大切だと感じました♪

講演後、お送りさせていただいたのですが、三浦さんは『嚥下』に大変感心がおありで、今回稲葉先生と飯塚会長の講演も熱心に聞いてくださいました。 

「飯塚先生がお話されていたラビリントレーナーは素晴らしい。舌だし体操100回と同じ、もしくはそれ以上の効果が、ラビリントレーナーはわずかな訓練で効かせることができますね。」 

と、大変興味を持っていただけました。

エレベーターに乗ろうとすると・・・

「こんなにいい階段があるから、こっちで降ります。」

と、軽快に20キロのリュックサックで階段を降りてらっしゃいました。

常にバリアなしなのですね(^_^)

85歳での登頂、心より応援したいと思います!!! 


2015年1月 5日

『高齢者の食生活に対するリハビリテーション』

〜稲葉歯科医院顧問、IPSG包括歯科医療研究会代表〜

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稲葉先生は昭和63年より大学で日本で最初の高齢者歯科を立ち上げました。 

丁度日本で高齢化が始まった時です。

65才以上の人が全人口に占める割合が14%を超えると高齢化が始まったといわれます。

17%を超えると高齢化の化がとれ高齢社会となり、さらに25%に達すると超高齢社会に突入します。 

現在我々は超高齢社会の真っただ中にいるという訳です。

従って僅か25年で4人に1人が高齢者ということになります。

日本の高齢者の特徴は欧米と比べ、口腔の状況が悪く食事がうまく取れないことです。

このような事情で国は平成元年に8020運動を立ち上げ、 80才で20本の歯を保とうという運動でしたが、20年経過した今でも20本保っていないのが現実です。

当時は8005で僅かに5本しか有りませんでしたが、現在でも僅か8010程度で、 なかなか20本には到達できません。

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学術大会の特別ゲスト、三浦雄一郎さんも『嚥下』について大変興味を持たれ、稲葉先生と飯塚先生の講演を聞くために早くいらっしゃってくださいました(^_^) 

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現在85才で60%の人が総義歯になっています。

総義歯になってもその評価が低く、考えられないような安い値段で作らなければなりません。

したがって義歯をいくつ作っても合わない、食事をするときには外す、 というような事態に陥っています。

総義歯は多くの知識と技術が必要になります。

解剖学、生理学、生化学、理工学 etc.の集合した知識が必要ですがその評価が考えられない位低いのが現実です。

その結果何不自由なく噛める義歯が少ないことも事実です。

「リハビリテーション」とは本来あった状況に戻すということが目的です。

しかし日本では現状で対応しようとし、もと有った機能を取り戻し健康を保つことを考えていません。

食べられなければ米はお粥にし、副菜はミキサーにかけてトロミをつけて飲み込ませ、 元の形や食感などは二の次です。

本来の食生活とは遠いものです。

私たち歯科医師はこのような高齢者に対し、本来の食事が出来るように、 リハビリテーションの一環として、質の高い義歯を入れ、 高齢者の食生活を護ることが出来るのです。

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実は今回、ご覧頂いたのは、三浦雄一郎さんのお父様、 三浦敬三さんのビデオです。

三浦敬三さんは101才で現役のプロスキーヤー、99才でモンブランを滑走されました。

その秘訣について、『食生活』と『嚥下体操』について語られていたので、稲葉先生は録画し、大切に持っていたそうです。

毎朝、嚥下体操(舌だし体操)を100回。

顔の皺がよらないためにはどういう方法がいいか、顔面の筋肉を強化したほうがいいのではとお考えになったそうです。

舌だし体操により、胸の筋肉や首の筋肉の他、顔面全体の筋肉を使う事を実感されたそうです。

そして90歳を越えると食が細くなりますが、玄米を最低50回から100回噛んでいたそうです。

今回の動画をご覧頂き、口腔機能のリハビリテーションは非常に大切だと実感していただいたと思います。

摂食、咀嚼、嚥下が元のように回復するのが、本来のリハビリテーションだと考えます。

続いて、IPSG包括歯科医療研究会、会長の飯塚能成先生の発表です♪  

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今回、飯塚会長は、三浦雄一郎さんがいらっしゃるということで、ぜひラビリントレーナーを紹介させていただきたいとおっしゃっていました。 

飯塚会長は、稲葉先生が開発されたラビリントレーナーを用いて、施設や病院に直接出向き、摂食・嚥下訓練の普及に努めています。 

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事前に、三浦さんにもラビリントレーナーをお渡ししたのですが、講義が始まる前から興味津々の模様です(^_^) 

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最近、若い人の発音の悪さが目立つ時代であると同時に、高齢者の方は嚥下機能の低下が深刻な問題となっています。

これまで4番目だった「肺炎」による死亡数が脳血管疾患と入れ替わり、3大死因のひとつになりました。

これは、高齢者の人口が増え、誤嚥性肺炎が増加したことが影響していると考えられます。

現在、高齢者の誤嚥性肺炎に対する対策はほとんどされていないのが現状です。 

私たち歯科関係者がどのように『摂食・嚥下』に取り組んだら良いのかを、具体的にお話くださいました。

とくに、飯塚会長が大切だと訴えられていたのは

『鼻呼吸』の重要性についてです。

こちらに関しましては、IPSGサイトの中のQ&Aページで詳しく解説してくださいましたので、ぜひご覧下さい。  

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講演の最後は三浦雄一郎さんや安生朝子先生を交えて、ラビリントレーナーの実習を行いました♪ 

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ラビリン体操を先生方に体験していただき、その効果を実感していただきました。 

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ラビリン体操を行うことで、体全身に力が入ることを会場の先生方は実感してくださったと思います。 

飯塚会長のお話の中でもう一つ印象的だったのは、

「今や元気な高齢者による高齢社会作りが大切」

ということです。 

講演後、三浦さんから

「飯塚先生がお話されていたラビリントレーナーは素晴らしい。舌だし体操100回と同じ、もしくはそれ以上の効果が、ラビリントレーナーはわずかな訓練で効かせることができますね。」

と、大変興味を持っていただけました。

超高齢社会を迎えた現在の日本で、口腔トレーニングの重要さを強く感じた、今回の学術大会でした。

 

2014年12月 3日

ISOI国際口腔インプラント学会学術大会に参加するために、大阪に行ってきました♪

DGZIは、今年4月にIPSG20周年記念特別講演会にお招きした、ドイツTuebingen大学のWeber教授が代表を務める学会です。

会員数は世界中で4000人を越えるそうです。

今回参加させて頂いた目的のひとつは、やはりWeber教授にお会いしたいということもあったからでした(^_^)

最初の講演は、Vollmer教授による

「 チタン既製クラウンの主要部分と新しいプラスチック材料を用いCAD/CAMで作製したクラウンを組み合わせる二重クラウンの臨床的応用について」

ということで、テレスコープシステムやコニカルクラウンについてのお話を聞く事ができました。 

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テレスコープシステムは、

Starr R.Walter a dentist from Philadelphia/USA reported in 1886 about a removable bridge made of double crowns.

とあるように128年に及ぶ歴史ある技術だというお話をされました。

そして、1969年にKoerber教授により、ドイツでブレイクスルーが起こりました。

conical crowns with a defined angle of convergence. 

コーヌスクローネですね♪

テレスコープシステムがブレイクスルーした真っ最中に父である稲葉繁先生が幸運にも、ドイツへ留学していたということになります。  

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レジリエンツテレスコープについてもお話があり、大変びっくりしました。

なぜなら、開発されたのはTuebingen大学なので、ドイツでも一部の先生しか知らない方法だと思っていたからです。

Vollmer教授ご自身、20年経過症例をお持ちで大変長持ちするテレスコープだとおっしゃっていました。

Resilience telescope:

Primary and secondary parts should have some backlash in occlusal region in order to have some space on top of eace other under load,so called resiliency.

とお話されていたように、軸壁はパラレルでトップのところに歯根膜の沈み込み分、緩衝腔を設けています。 

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ドイツでは古くからの歴史あるテレスコープは、Vollmer教授の臨床経験から明らかに、テレスコープとコニカルクラウンの使用はインプラントの上部構造に、とても有益な方法だとおっしゃっていました。  

インプラントの上部構造をテレスコープにする【利点】は

  • 口腔外での修理が可能。
  • 歯周衛生が適切にできること。
  • 高齢者にも簡単に取り外しができること。

【欠点】として、  

  • 歯科技工士のレベルが相当高くないといけないこと。
  • コストが非常にかかること。

などを挙げられていました。 

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そして、今回新しい材料、PEEKのテレスコープ応用についてお話がありました。

Vollmer教授はガルバノによるテレスコープもされますが、最近ではこの材料を好んで使われているそうです。

医学では人工関節などで使用されている材料だそうです。

でも・・・

日本の薬事を通って応用されるようになるには、遠い先のような感じがしました(-_-) 

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ドイツでは歯が強くなくてはいけない。

日本のように小さな食べ物ではなく大きな食べ物をちぎらないといけないのです。

なんて、お話をされていました。笑 

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そして、Weber教授の講演です♪ 

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座長は、IPSGでも講演をしてくださった神奈川歯科大学付属横浜クリニックインプラント科の林昌二先生 です♪

来年から定期的に林先生に講演をお願いする予定なので、どうぞお楽しみに(^_<)-☆ 

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Weber教授が素晴らしい方であることの理由がよくわかりました。

必ず、講演前に日本の友人、お世話になっている方へのお礼や感謝の気持を述べられるところです。

今年の4月に我が家の自宅に招かせて頂いた写真や、IPSGのパーティーの模様、父、稲葉繁先生に対する感謝の気持をお聴きする事ができ、早速父にも伝えようと思いました。 

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講演では、スパークエロージョン(放電加工)による可撤性、固定性補綴物の最も高度な技術について、その後の可能性も含め、目が覚める様な、素晴らしいお話されました。 

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リーゲルテレスコープ、旋回リーゲルとインプラントの応用について、

放電加工による、Co-Cr-Mo合金を用いた症例をいくつも見ることができました。 

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テレスコープの着脱方法の決定にはコナトアの使用は欠かせません。

インプラントによる補綴物に関しても必要だと思いますが、日本ではあまり普及していないように感じます。 

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動画による放電加工の様子を見る事ができました。

テレスコープには高い精度が求められ、複雑な技工過程が伴います。

インプラントの安定化のためにも、放電加工は大きな可能性を秘めていると感じました♪

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最後に、一緒に記念写真を♪

来年、10月にIPSGのメンバーでWeber教授がいらっしゃる、Tuebingen大学を訪問することになりました。

ちょうどオクトーバーフェストの時期でもありますし、これから、楽しい企画を立てようと思います(^_<)-☆

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稲葉歯科医院 院長 稲葉由里子 顧問 稲葉繁

稲葉歯科医院
院長 稲葉由里子

昭和44年に父、稲葉繁(現・顧問)が文京区伝通院で稲葉歯科医院を開業、平成11年に場所を移して秋葉原で新しく開業しました。

「入れ歯が合わず、食べたいものが食べられない」
「口を開けると金属のバネが見えるのがいやだ」
「うまく発音できないので、しゃべるのがおっくう・・・」

このような入れ歯のお悩みをお持ちの方、多いのではないでしょうか。

当院では、入れ歯の本場ドイツで直接学んだ技術を活かし、つけていることを忘れるくらい、自分の歯のように何でも噛めて、笑顔に自信がもてる入れ歯を作っております。

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